僕はまんちん

モラトリアム期間満喫中。大学三回生

多くを持ち過ぎた男


ごきげんよう。
今日は日曜日、昼餉に両親と地元のラーメン屋へ脚を運びました。そうしましたらものすごい混雑をしておりまして、ものすごいと言いましても池袋の無敵屋の様に長蛇の列ではないのですが、そもそも並ぶのが嫌いな私にとってウェイティングがかかっているというのはものすごい混雑ということなのです。そもそも私は美味しいラーメンという感覚がイマイチわからず、ワンコインでお店のラーメンが食べられたらばそれは良いラーメンであるなと思うのです。
今日行ったラーメン屋さん、少しお値段は張ったものの、煮卵が大変美味しうございました。


「多くを持ち過ぎた男」についてお話いたします。
私のバイト先の先輩(年齢的には下)に鰯君という男の子が居る。彼は某お坊ちゃま大学に在学し、成績優良者として学費を免除されている人間で、私の様な凡人から見れば希代の天才である。「将来は官僚になる」と平気な顔をして言った彼を素直にすごいなと感じた。私の様な凡人は官僚とか天下りとかは本当によくわからないがなんかもうとにかく、彼は凄いのだ。
鰯君はもうとにかく女の子が大好きだ。彼曰く「ブランド名を使えば女なんて簡単に抱ける」だそうで、そもそも彼がその大学を受けたのも女を抱きたいからだそうだ。初心な私が「女の子と仲良くするには経済的負担が物凄くかかるのでないですか?」と尋ねると「時給5000円の家庭教師してるんで」などと言いかえされ反論の余地も無い。又、彼は女の子と交わる際に備えて屈強な筋肉も日頃のトレーニングで身につけており、イチローのミートばりにどんな話題でも幅広く盛り上げるコミュ力を持つ。更には夜の自慰行為にも余念がなく、好きなAV女優のDVDを全て揃えている。パソコンで全ての動画を見ることができるこの時代にだ。彼の行動は本当に全てが性欲に起因している。彼を見ているとヰタ•せクスアリスを思い起こす。とにかくもう、彼は天才であると同時に阿呆なのだ。

そんな彼と今日の勤務中も雑談をしていた。私のアルバイトの内容は三割が散歩、三割が清掃、残りの四割が鰯君との雑談からなる。
「なんだかニヤついてませんか?」
鰯君が言った。
「いやー、最近なんとも幸せでね!実はもうすぐ付き合いそうな相手がいるのだよ鰯君」
満面の笑みで私が返す
「抜け駆けですか!」
「すまんね、君も良い加減に女遊びは辞めて愛を感じたまえ」
「愛か、僕にはそれだけがない」
「むかつく言い方だな。確かに鰯君は金も学歴も性欲を満たしてくれる女も筋肉もコミュ力も持っているものね」
「でもまんちんさんが手に入れたそれを僕は持っていない」
「私が君に勝っているのはせいぜいそれだけだよ…」

鰯君は多くを持ち過ぎてしまった。若くして彼にとっては女なんて学歴と経済力で手に入れることのできる物と化してしまったのだ。それに対して私は彼の様に大それた物は何も持っていない。学歴も普通、金は無い、筋肉も無い、コミュ力も対して無い、せいぜい大切な人がいるくらい。私の気分はヤンソンの描くスナフキン、私にとってハーモニカは愛する女性と言ったところか
「鰯君、君は余りに物を持ち過ぎた。いくつか捨ててみなきゃ愛は掴めないかもよ」
「そうかもしれないっすね」
スナフキンの様な気持ちになった私はスナフキンが言いそうなアドバイスをして得意気な気持ちになった。



家に帰ると鰯君から連絡が
「実は遠距離の相手で好きな人が居たのですが、まんちんさんと話をして愛って大事だと思い告白したらOKが出ました!いえーい!」

彼は全てを手に入れた。私が彼に勝る部分はもう無い