僕はまんちん

モラトリアム期間満喫中。大学三回生

山ノ神杯

前回の記事で書いた自戒旅、この旅を大きく大別するなれば6つのchapterに分ける事ができる。それぞれにタイトルを付けるなら
一章  「期待」
二章  「絶望」
三章  「成長」
四章  「休息」
五章  「復活」
六章  「競争」
となる。

今回はこのうちから、第六章の「競争」について書こうと思う。

日本橋を出発して三日目の朝、我々は90kmの道程を歩いて小田原市へと到着した。
この時点でのパーティーは三人なのでまずは彼らをあだ名で紹介したい。あだ名については深く言及しないで頂きたい

未成年淫行氏
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今回の旅の企画者。足裏にマメが12個できた猛者、靴が合わないのもあるがすこぶる肌が弱い。足の指は左右合わせて10本であるが、そのうちマメの無い指は3本しかない。疲れている人を見ると元気が湧くという特殊スキルを保有し、通常であれば徒歩旅行など継続不可能な足裏の痛みを余裕で乗り越える。

妻みぐい氏
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良い顔と引き換えに、神は彼に身長を与えなかった。神は二物を与えずという言葉の犠牲となった小柄な少年。日頃恐ろしくポジティブな彼もさすがに今回の旅では死んだ魚の顔をして「小田原で帰る…」「箱根は無理…」「小田原で帰る…」「I want 文明の利器」「コタツの中でちんこたつ」と繰り返し発声していた。

クズ(天然物)氏
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彼女とプール、サークルの練習と多忙な彼は2日目の夜から合流。くしゃっとなる優しい笑顔からは想像できないほど下衆な発言を悪びれる様子も無くさらっと言う計算性の欠片も見せない純度100%天然物のクズ。中学時代にはローターを既に使い飽きる。合流してから30km程の道程しか歩いて無いが、そもそもリア充でここ数日休息をとって居なかったために疲労は上記二人と同レベル

以上が我々御一行の紹介である。我々は小田原城下の公園にて仮眠を取り、最終地点箱根湯本へ辿り着くための英気を養った。英気を養うといっても仮眠程度では足裏や下肢筋肉の疲労が取れるはずが無い。しかし、歩行中に疲労と眠気から消え入りそうになる意識を繋ぎとめるため、靴と靴下による圧迫で熱を溜め込んでいる足裏の放熱をするためにも、箱根に入る前にどうしてもここで仮眠して起きたかったのだ。

三人とも目が覚め、箱根に向けて歩を進める。妻みぐいは相変わらず死んだ魚の目をしている。クズ(天然物)はまだなんとかなりそうだ。未成年淫行は死にそうな妻みぐいを見て嬉しそうである。

「箱根湯本まであと7kmとなりましたが、提案です。ここから三人で箱根湯本まで競争したらどうでしょう」

旅の企画者である未成年淫行氏が箱根駅伝を意識して提案。

「それは面白い。」

「せめて、せめて俺がゴールするのを最後まで見届けてくれよ…」

乗り気なクズ(天然物)氏と死魚の妻みぐい氏

「では、ここがスタート地点。ゴールは湯本駅前の交番。名付けて山ノ神杯!妻みぐい氏、選手宣誓をお願いします。」

「えー、私達三人は…ヨーイドン!」

妻みぐい氏の大胆不敵な奇襲スタート合図でレースがスタートした。妻みぐいと天然物が歩いて向かう中、未成年淫行は走って二人を置いて行き独走状態

「妻みぐいのチビ!アンダー170!小学生!顔はかっこいい!つまみ食いなんかしやがって死んで彼女に詫びろ!阿呆!天然物、お前の彼女は貧乳!乳が無くて何が女だ!」

スタートダッシュと同時に気持ちが高揚し過ぎ、二人に思いつく限りの罵詈雑言を浴びせた未成年淫行氏。二人は後ろで怒りをあらわにしていたが、壮絶なスタートダッシュをみせる未成年淫行氏には追いつけない。そのまま未成年淫行氏はぶっちぎって一号線を独走し山道へと入った。未成年淫行氏は頑張ることが大嫌いである。世の中が努力を賛美すれば彼は耳を塞ぐ、自分を頑張っているなどと言う輩は死ねばいい。そんな彼が疲労の中でひたすら山道を走り続けている。足裏の痛みは元から限界に来ているのに、彼は一位でゴールをして後からゴールした奴等を罵倒したくて仕方が無い。その一心で走り続けるのだ。

対する妻みぐい氏と天然物氏は未成年淫行に罵詈雑言を浴びせられた怒りからタッグを組むことにした。冷静にグーグル先生で道を調べる妻みぐいの判断で、一号線を走るよりも市街地に逸れた方が近道であると気づく、事実この市街路と一号線が合流する地点には、走っていた未成年淫行氏よりも歩いて進んだ妻みぐい&天然物ペアが先に到着した。

しかし未成年淫行氏の脚は止まらない、直ぐさま前に居た2人を追い抜く、追い抜き様に足止めをしようと天然物氏のリュックに括り付けてあった彼のジャージを引っこ抜いてぶん投げた。地道に歩を進める彼等にはこういう些細な事が1番ダメージを受けるのだと思ったが、天然物氏は「そんなものいらん!」と一喝。投げ飛ばされたジャージに目もくれずにゴールだけを見ていた。どなたかジャージを拾ったら郵送してください、天然物の家に着払いで良いので

そんなこんなで走り続ける未成年淫行氏は首位独創状態、箱根湯本へ先に到着。バス停の前に観光客が多過ぎて、汗だくのシャツに銀マットを背負う男が1人は怪しいだろうと2人の到着を待つ。待つこと10分、2人も遂に到着

「ゴールって交番の前だよね?」

と妻みぐい氏がいらんことを思い出してダッシュ、結局一位は妻みぐい、二位は未成年淫行、三位は天然物となった。未成年淫行氏は山ノ神杯のプロセスに力を出し尽くしたために、もはや結果など気にする余地が無く、二位にもあっさり納得した。

その後我々御一行は早川で水浴びをし、天成園にて日帰り入浴をして帰った。
早川での水浴びはつまみ食いがパンツ一丁になっていたので、交番の裏と言うこともあり、こいつ補導されないかなーなどと密かにワクワクしていたが何も起こらなかった。
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天成園は浴衣タオルのレンタル、アメニティ一式揃っていて自由に使ってよい施設、睡眠が取れるリラクセーションルームなども完備して日帰り2400円という良心的な施設で大満足であった。
一夏の思い出として、そこそこ有意義な旅になったのではないなと思う。

最後に、スタンドバイミー風に締めくくるのであれば

ーーこんな友達とは、もう二度と、出かけたく無いーー
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